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君無き世界(倉庫)

イチウリ妄想暴走日記へのご来訪、ありがとうございます^^

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一雨SS White Day ※「君の知らないチョコレート」を読んでからどうぞ。



  ■   ■   ■    Boys Don't Cry    ■   ■   ■


                                      □ □ 一護視点 □ □
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「はい、お兄ちゃん。こっちが織姫ちゃんの分。こっちが石田さんの分ね?」
「おお・・・・・・・・・お?」


 何が?


「織姫ちゃんにはマフィン。石田さんへはあたしからブラウニー。夏梨ちゃんからはクッキーだから、今日学校に着いたらちゃんと渡してね?」

 ラッピングされた菓子にはちまっとした英文字で 『White Day 』 と書いてある。


 あ─ ・・・・・・・・・。
 あれからもう一ヶ月たったのか。


 先月のバレンタインディ。
 俺は石田が作った半端なく旨いチョコレートが欲しくて、石田んちまで取りに行った。
 部屋には上げてもらえず玄関先で帰されたが、その代わり遊子と夏梨の分も用意してくれたし、何より来年の約束を取り付けたので、割りと上機嫌で家路につく。
 石田のチョコは妹2人も大絶賛だった。
 こいつはあん時のお返しか。珍しく夏梨も一緒にキッチンで何かやってるなと思ったら。


「ああっ!!ごめん!お兄ちゃん!!」
 あ?今度は何だ?
「お兄ちゃんの分、作るの忘れた!!」
「は?俺の分?」
「お兄ちゃんの分の、石田さんへのお返し、用意してないの。忘れたの」
「いや・・・・・・別に石田も、俺からの返しはいらねえと思うけど?」
「そんな訳にはいかないよ!お兄ちゃんが貰って来たんじゃない」
 それはそうか?しかし俺からだっつって、あいつが喜ぶか?
 ・・・・・・・多分喜ぶな。
 洗剤とか、ティッシュペーパーとか。何か生活に密着したやつ。
 でもまあ昼飯奢んのが一番手っ取り早いか?
「わーった。俺から適当に返しとく」
「適当って・・・洗剤とかトイレットペーパーとかはNGだからね?」
 うおっ、何で分かった?
「・・・駄目なのか?」
「バレンタインのチョコのお返しに、そんなロマンチックの欠片もない物、喜ばれないよ!」
 いや十分喜ぶと思うけど・・・・・・・・待て!
 何で石田への返しにロマンチックが必要なんだ?
「絶対何か、石田さんが好きそうな可愛い物、用意してね?」
 俺は可愛いもんを選ぶセンスないぞ。
 いやいやその前に遊子、お前石田の性別間違えてないか?
「石田さんは手芸部の部長さんなんでしょ?気合入れて探してね!」
 ・・・・・・・・・・・あれ?可愛い物で合ってんのか??
 釈然としないながらも、俺は取り敢えず妹手作りの菓子を鞄に入れ、登校した。





「黒崎くん、おはよう」
 教室に入ると井上が笑顔で挨拶を向ける。井上のはこっちの包みだったな。
「・・・はよ。これ、ホワイトディのお返し。遊子からだけど・・・・」
「わ・・・わあ!有り難う・・・・・・・可愛い包みだね?」
「中、マフィンつってた」
「やったぁ!嬉しい・・・。来年は遊子ちゃんと夏梨ちゃんの分も作・・・・・・・」
「い────からっっ!!気持ちだけで!!遊子と夏梨は無理だから!!」
「無理?何が無理なの?」
「い、い、石田?!おはよう!良い朝だな!!」
 井上との会話に苦しくなり、俺はそそくさと石田に駆け寄った。
「おはよう、黒崎。朝から煩いな・・・何をテンパってる」
「やっ、気にすんな!これ、遊子と夏梨から!」
 慌てて鞄から出そうとして夏梨のクッキーを取り落としかけたが、石田が素早くキャッチする。
「何?何で僕に?」
「先月のお前のチョコ、二人ともすげ気に入ったみたいで、お礼だってよ」
「そう。お気に召して貰えたなら嬉しいよ」
 あ?今ちっと表情が柔らかくなったか?
「俺も・・・お前のチョコ、すげェ好きだぜ?」
「君はもう少し歳相応の遠慮を身につけろ。僕は迷惑だ」
 うわぁ・・・何つー嫌そうな顔。何なんだこの落差は?腹立たしいぞ。
「あー・・・、こっちのクッキーが夏梨で、ブラウニーが遊子からだ・・・・・と、それはそうとして、石田」
「何?」
「昼は俺と飯、一緒しね?奢るし・・・・・・・」
「今日は土曜日だけど?昨日なら存分に奢られてやったのに、残念だ。」
 ああーっ!しまった!土曜か??そういや俺も弁当持ってきてねーじゃん・・・・・迂闊。
 どうすっかな。
 当初の予定通り、洗剤とかにしとくか?遊子には怒られるだろうけど。
 や、買いに行くのも面倒臭ェし、ストレートに聞いとくか。遊子への言い訳も立つし。
「お前、何か欲しいモンあるか?」
「何で?」
「いや・・・。ホワイトディのお返しをだな・・・・・・・その、お前・・・・」
「バレンタインの遣り取りを、君となんかしたくないよ。気色悪い」
「きしょ・・・・・・おま!ちょ、言い過ぎだろ?」
「それは悪かった。君、ほんと恐い顔のわりにナイーブだよね」
 ・・・・・・謝られた気がしねぇ。
「欲しいもんないのか?ないなら・・・・・・」
 やっぱ洗剤か?
「欲しいものというより、君に頼みたい事ならあるよ?」
「頼み?恐ェな・・・・・・何だよ?」
「霊圧を抑えるのをいい加減覚えて欲しい。君と擦れ違う度にドップラー効果を思い出して、うんざりするんだけど。君、サーキット並に煩いよ?」
「悪っ。それ以外で頼む」
「即答!?君今、一瞬も考えなかったろ!!」
「や・・・・・・無理?」
「君には向上心というものがないのか?本来それは最優先事項だぞ!!」
 そんな事言われてもなぁ・・・・・・実は普段からやってんだよ。
 精一杯やってこれだなんて石田に知れたら、どんだけ呆れた顔をされっか想像つくので黙っとく。
「遊子のやつがちゃんとお礼しとけって、煩いんだよ。他に何かねえのか?」
「じゃあ君の気持ちを貰っとく。有り難う。もう直ぐ本鈴が鳴るぞ、席に着け」
「あのなぁ・・・何でんな追っ払うような態度なんだ?」
「追い払ってるんだよ」
「てめ・・・・・・・・・・」
「おらー、お前たち、席に着けー」
 いよいよ限界に達した俺の怒気を、本鈴と共に入って来た担任の越智の声に掻き消された。





 くそ!くそくそくそ!!
 意地でも何かくれてやる!見てろよ石田・・・・・・ぜってーギャフンと言わせてやっから!
 あ?何か趣旨違ってねえか?まーいいや。
 しっかし俺、ギャフンと言わせよーにも石田の事、何にも知らねーんだな?
 好きなもんとか、嫌いなもんとか、得意分野、苦手なもん・・・・・まず石田と会話しないし。
 ぱっと見、何処にでもいるような、特に目立ちもしない普通の奴だよな?
 中身は常識をとんでもなく逸脱してっけど。生身で飛簾脚なんざあり得ねえだろ。
 あれ?ひょっとして俺、あいつと生身で喧嘩すっと勝てねえ??
 ・・・・・・・・代行証、肌身離さず持っとこ。
 あいつは手芸部だから、可愛い系は寧ろ避けるべきだよな?変なもん用意してあいつに失笑なんぞされたら、ぜってー我慢できね。
 俺が貰って嬉しいものは、間違いなく石田の趣味じゃねえだろうし。うぜえな畜生。
「石田、122ページから読め」
「はい」
 おっと・・・・・・やべ。授業中にガン見し過ぎだろ俺。



「その野は いつまでもいつまでも
 窓の外につづいた 海のようだった。
 近く遠くところどころに 誘蛾灯が光っていた。またたきもなく。
 ああそれらの誘蛾灯の 鮮烈な一つの灯と灯のあいだは
 なんと大きな暗い空間だったろう。
 かかる美麗なる暗黒を はじめて見た。」



 石田の声は、好きだ。
 透明感のある、バイオリンの音のようで、何ら抵抗感無くすんなり耳に入ってくる。
 そして耳の奥を擽り、その刺激が胸まで伝い、気持ちの良い余韻が広がって・・・残る。
 最近は少しだけ人当たりが良くなり、ツンドラ気候から冬の日差しくらいには暖かくなった。
 なのにどうして俺と話す時は、あんなにつれないんだ?
 死神嫌いのくせに、ルキアと話す口調はマイルドだぞ・・・・・・・・・納得いかねえ。
 そういやあいつと一緒に行動する時は大抵殺伐としてて、嗜好について語り合う空気じゃなかったな。
 石田の好きなものとか、嫌いなものとか、俺、知りたいかも・・・・・・・。
 あいつが普段なにしてるのかとか・・・・・・いや、それは容易に想像つくけど、ある意味謎だ。



 石田に何をやったら喜ぶのか、見当もつかない。
 だからあいつが嬉しそうな顔したら、俺の勝ちにする。つか見てえ。
 俺に向ける表情の半分くらいは嫌そうな顔だよな。ちっとは笑えっつーの。
 たまには俺にも笑いかけてみろよ。


 それって石田を喜ばせるってより、俺が嬉しいのか?もしかして・・・・・・・・。
 いつも俺以外に笑いかける石田の柔らかい物腰を思い出し、俺はちょっとだけ切なくなった。






                                          2へ続きます



 ◆次は石田視点になります ^^


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拍手お礼SS 熱視線

                           熱視線

                                       『初恋』 続きポエム 雨竜独白





黒崎一護がいつの頃からか、僕を見ている。昨日も、今日も、恐らく明日も。
見つめるなんて生易しいものではなく、「叩っ斬る!」といった殺伐とした眼だ。
霊圧も不安定で鬱陶しい事この上無い。
話があるなら話し掛ければ良いだろうに、それもせず不機嫌そうに沈黙する。


そして、その頃から、井上さんの様子もおかしくなった。
それまでは黒崎を見つめる瞳は静かだが、ハートマークが霊圧から漏れてそうな勢いだったのが、ある日を境に翳りを帯びたそれに変わった。
何があったのか知る由もないが…こればっかりは、僕にはどうする事も出来ない。
原因は黒崎だろうから、二人の問題に僕が口を挟むべきではないし。
ただ、彼が僕を睨むのはどういった了見なんだ?


そしてその中に僅かに……僕に触れるような視線が混ざる。


それは髪だったり、指だったり、項だったり。
唇………だったりも…する。
問い質したいけど、聞いてはいけない応えが返って来そうで恐い。
霊圧のイメージから察するに、彼はどうも僕に触れたくて堪らないみたいだ。
霊圧が駄々漏れで丸分かりだ。そして、多分、井上さんも気付いてる筈。
彼女の隠しても隠し切れない切なさが伝わって来て…。


黒崎が黙すように自身も沈黙を守るより術が無く、そして僕はこの堂堂巡りに対し、途方に暮れる。




後書■妄想駄々漏れやん一護(笑)
気の強い雨竜が、「何なんだ君は!一体何が言いたいんだ!」…て怒鳴れないくらい、熱視線を頂いてるようです。まあきばりや。因みにタイトルは笑う所です。

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