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ご無沙汰いたしております、雪です。
またしてもFC2に入れなくなり(パスワード変更して忘れた)こちらにUPしますた 。
初のオリキャラ(しかもおっさん)×雨竜です。一度でいいから書いてみたかったんです。
しかも異世界転生モノです……^p^
知らない人にはちょっと不親切設定かも知れないですごめんなさい。
書いてて私だけが非常ぉぉに楽しいです。
オリキャラ(しかもおっさん)が苦手な方は、回れ右でお願いします!>人<;
これがタイトルです↓
剣と魔法のファンタジーに転生する筈が何故か『BLEACH』の世界に迷い込んでしまったおっさんの話
§
「俺を……助けてよ、遠矢。苦しい……」
そう言って、幼馴染で親友であった男が、俺の胸にナイフを突き立てた。
凶刃は肋骨に当たり、僅かに心臓を逸れる。
しかしそれは、俺の疑問と苦痛を長引かせた。
「……何…で?」
言葉を発すると、胃の中に流れ込んだ血で吐きそうになる。
ほんの二分前までは、親友だった。一度も疑った事はない。そのお前が……何でだよ?
「もう誰も……たくない。…ごめん、ごめんな、遠矢……」
「……嘘、だろ?」
俺の返り血を受け、真っ赤に染まったナイフを引き抜き、奴はもう一度正確に心臓を貫く。
命のスイッチを切るように、俺は瞬きする間に深い闇の底に堕ちた。
それからどのくらい経ったろうか。
やけに明るい光に眠りを妨げられ、俺は目が覚めた。
一瞬、手術台にでも寝ているのかと思ったが、違った。
光芒が幾重にも重なり、周囲がよく見渡せない。
辛うじて見えるのは白い滑らかな床だろうか。
少なくとも日本ではない。ここは天国か?
暑くも寒くもない。というより、暑さも寒さも感じない。
後はいよいよお迎えを待つだけかと、俺は居住まいを正した。その時。
「目覚めましたか?」
女の声がした。
あちこち視線をやるが、声の主は見つからない。
「私の名はアデル。あなたを導く女神です」
女は自らを女神アデルと名乗った。
澄み切った空のような、透明な水の底のようなどこまでも透き通った声。
人ではないのだと信じられる、神々しい響き。
俺はその、人ではないであろう存在に、疑問を投げた。
「俺は、死んだのか?」
「…そうです」
あっさりとした応えに、分かってはいたが、色々と込み上げてくるものは抑えられない。
だが、不思議と取り乱しはしなかった。
あんなに辛くて苦しくて悲しい出来事を、俺はどこか高いところから見下ろしているような冷静さで思考する。
俺を殺したあいつの事を考えている。
「何であいつは、俺を殺したんだ?」
「それには答えられません。あなたには既に終わった人生。私が出来る話はこれからのことだけです」
『答えられない』───か。
それは「俺が死ななければならなかった理由」を知っているってことなのか?
「じゃあ、これからの話ってのは?」
「賢明ですね。あなたには今の記憶をそのままに、新しい世界での新しい人生で、勇者をやって頂きます」
「却下で」
「却下を却下します」
「何言ってんの?勇者?それどんなラノベ?俺TUEEEとか、無双チーレムとかの、アレ的なやつ?」
「大体そんな感じです」
「何言ってんの?俺35歳なんだけど。この年になって厨二拗らせたおっさんに、俺になれと?恥ずかしげもなく自己陶酔したキメ顔で詠唱を唱えろと?嫌なんだけど」
「大丈夫です。朱に交わればみんなやってます。あなただけ悪目立ちしませんから」
「いや、元の世界で俺が殺される前に戻してくんない?」
「無理ですよ、もう死んじゃったし」
「俺は何で殺されたの?」
「守秘義務につきお答えできません」
「俺の個人情報なんだから開示してよ」
「賢明ではありませんね。私の管轄ではないんですよ。諦めて下さい」
この女神から情報を引き出すのは難しそうだな。
にしてもこれは…所謂あれだ。異世界転生というやつか。
軽く説明すると、前世の記憶があるという前提の上で、前世とは異なる世界に生まれ新しい人生を歩むこと。
あんまり詳しくはないけど、ラノベはいくつか読んだことあるし、ありがち設定くらいなら分かる。
「因みに承諾した場合、俺にはどんなメリットがある?」
「まずあなたのステータスが確認できます。LEVELは最初から99で、まだ伸びしろはあります。職業は魔法剣士。ジョブチェンジは可能です。魔法属性は火・水・風・土・氷・光・聖・闇・重。称号は勇者。後に英雄となります。スキルは【気配察知】【隠密】【看破】【鑑定】【隠蔽】【治癒】【清浄】【リ…」
「どんだけ俺に勇者やらせたいんだよ!チート過ぎっだろ!」
「楽しい冒険になるかと」
「既に誰かが一周した後のゲームじゃねえか!中古かよ!」
「ですが、これはゲームではなく、本当に死んでしまうので…」
「ありがたくチートでやらせて頂きます」
「え!やってくれるの?!」
「前世に戻れないってんなら、否応もねーだろ」
勇者とかそういうの興味ないけど、新しく人生やり直せるってんなら、そっちを選ぶ。
後、まだ夢落ちの可能性も捨ててないし。
どうしても戻りたい前世って訳でもなかったけど、あいつにもう一度会いたい。泣きながら俺を殺した親友に、何があったのか問い質したい。
俺の殺害事件がそもそも無かったことになれば、尚良し。
そんな訳で、俺はスキルやギフトについてもう少し自分なりの解釈を加えてもらい、女神の加護も得て、新しい剣と魔法のファンタジーへと旅立った。
筈だった。
だったが。
どーゆー訳か。
俺が二度目の生を得た世界は、俺が前世で読んでいた人気漫画、『BLEACH』の世界だった。
ふざけんな女神出てこい!!
で。
紆余曲折を経て。
現在、25歳。
この世界での名前は小鳥遊珪吾。「たかなしけいご」って読む。
うっかりしてたけど、俺の場合の異世界転生は赤ん坊からのやり直しだった。
最初、世界観が前世と酷似していて、元の世界に戻ったのかと勘違いしそうになった。
しかし両親が別人で、微妙に前世の日本とは異なるので、疑似日本が舞台の剣と魔法のファンタジーかと思ったら、普通に死神が空飛んでて仰天した。
道端で幽霊っぽい感じの胸から鎖垂らしてる人とかも時々見かけ、あーもうこれBLEACHだよな。BLEACH以外の何物でもないよなと思ったわ。
どーゆーことだってばよ女神。
そんで、今俺が暮らしてるのは空座町。
完全なるモブの俺は、戦いに巻き込まれないよう、BLEACHが最終回になるまで息を潜めて待った。
折角、俺TUEEEになったけど、十二番隊に俺の存在知られたら人体実験まっしぐらだよな。ドロドロに液状化されちゃうよな。
だから死に物狂いで俺は俺を隠した。
元々ファンタジー仕様の俺の体には零落や霊圧がないので、魔法で何かそれっぽいの作った。
多分ちょっと見バレないと思う。
そうして今、俺の職場は空座総合病院。
そこで研修医をやっている。
「小鳥遊くん、君もここで休憩中かい?」
定位置になりつつある病院の屋上の一角で、柵の手摺に頬杖をつき煙草を吸っていると、彼が声をかけてきた。
誰あろう、BLEACHの登場人物の中でも重要なポジだった、石田雨竜、滅却師様だ。
「あー…、ちわっす」
「何その挨拶、体育会系だな」
「外科医志望なんで」
「僕も外科だけど、僕も体育会系かな?」
「石田センセーは石田センセーという生き物ですから」
「何それどういう意味?」
この石田雨竜という男は、見ていて全く飽きない天然くんだ。
病院のあちこちに置かれた編みぐるみや、壁に掛けられたキルトのタペストリーは彼の作だ。
確か花瓶の下に敷かれたレースもそうだ。器用ですねという域をとっくに超えている。
俺の今年齢は25歳だが、石田雨竜は現在28歳。
俺より3つ年上だ。
「石田センセーは体育会系でも文科系でもない、その真ん中くらいですかね」
「それは何系になるんだい?」
「可愛い系?」
「僕の話をしてたんじゃないのか?」
「石田センセーの話ですよ」
「可愛いと聞こえたが」
「正解です」
揶揄うと面白い。打てば響く。
「…どうしてみんな僕のことを可愛いと言うのかな」
「誰が言ってるんですか?」
「看護師さんたちとか…」
「モテモテじゃないすか」
「そうかな…何か違うような気がするんだけど」
いやいや、違わない。
あんたモテてますって。
吸い終えた煙草を携帯灰皿に押し込むと、俺はもう一本取り出して口に銜えた。
「…君、ちょっと喫煙量が多いよね」
「『医者の不養生』が国語辞典から無くならないように貢献してるんです」
「斬新な言い訳だけど、少し控えた方がいい」
最後の滅却師、石田雨竜様が俺の体の心配をするとか。
俺にとっては未だ微妙に二次元なこの現実で、設定まんまのいい奴を発揮してくるこの生真面目な眼鏡くんに、喜色を堪えきれない。
何だかな。可愛いよなこの男。
紙面ではあんま興味なかったキャラだけど、こうして向き合って話してると、なんつか、意外にも癒される。
こいつ、医者は天職だったかも。
あ、まだ言ってなかったと思うけど、俺の前世は医者だった。
そんで何となくまた医者を目指してみたけど、今はこの病院の院長、石田竜弦にリスペクトしてる。
その芸術的なオペに心酔し、この病院に勤務したいと強く願った。正に『神の手』だ。
「…じゃあ、これ吸ったら戻ります」
「……そう…」
おっと、虚出現。
視認出来る距離なので目で追わないよう注意を払う。
見えてると眼鏡くんに気づかれたら面倒だ。
しかし死神の気配がしない。お隣の滅却師くんが徐々にそわっとしてきてる。
ちょw
いかん。顔が笑ってしまいそうになる。
「やっべ。202号室の秋本さんに術後の説明まだだった」
点けたばかりの煙草を半分に折って、携帯灰皿に詰め込むと俺は急いで踵を返した。
「あ、小鳥遊くん、婦長さんが薬の確認をしたいって言ってたよ」
「わかりました」
なるほど。それを伝えにここに来たのか。
俺が屋上のドアを閉めて、階段を下りる頃。
空座総合病院の外科医、石田雨竜は飛廉脚で病院を後にし、少し長めの休憩に入った。
***楽しくてすみません