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月が見ていた
──阿散井視点──
石田の形の好い唇を親指の腹でゆっくりとなぞる。
口づけたい……。今すぐこの唇を貪り、覆い尽くし、息が止まるまで絡めたい。
俺はそんな風に、こいつの事を単純に欲しいと思う。それだけ惚れてる。惚れぬいてる。
だが現実には何も伝えられず、俄に霊圧の乱れた俺に石田は驚き、探るように俺を見つめて来る。まだ抵抗は無い。
霊圧は警戒しているのに体は無防備で、その不安定さが俺を煽りもし、怯ませもする。
「阿散…井……。」
石田が俺の名を呼ぶ。唇から親指を離し、そのまま顎を捕え顔を上向かせ覗き込んだ。
抵抗はしないが、全身で拒絶してるのは分かる。
この夜の海みてえな目が、俺の心臓を鷲掴みガシガシと揺さぶる。
こいつは禁忌だ。人であり、滅却師だ。
手を出しちゃ………駄目だ…。
分かってんだが、惹かれるのはどうしようも無く止められねぇ。
死神を嫌いながら、その死神に対してもお前は優しすぎる。
石田は決して護られる側じゃないが、時折強く抱き締めてやりたい衝動に駆られる。
胸の内の葛藤や焦燥や哀惜、そういったものを微塵も感じさせず涙など見せない。
一度さらけ出し、浅薄だった己の行いを悔いているのだろうか。
強くあろうとする姿は、何故だか俺の琴線に触れる。
「俺を、おめえの傍に寄せてろ。あんま…一人になるな。」
抱き締めたい。口づけたい。
だが俺は思ったまま振舞うような、頑是無い子供では無くその頤から指を離す。
せめて、ただ傍にいてやりたい。
今みてぇな、月の鳴く声が聴こえてきそうな静かな夜には…………。
■折角のシリアスな雰囲気ぶち壊しそうなので、コメントは語りません(笑)■
PS.最初『無題』だったのですが、後でタイトル付けました。