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君無き世界(倉庫)

イチウリ妄想暴走日記へのご来訪、ありがとうございます^^

ai☆koi 2




「で?実際のトコロ、接吻くらいはしたのか?お前達。」


ブーーーーーッッ!!!



少し落ち着いた頃に朽木さんがそんな事を言い出すと、今度は恋次くんが勢い良くお茶を吹いた……ど、どうしちゃったの??しかし朽木さんも然る者!
恋次くんの席のまん前に座っていたにもかかわらず、お店のメニューで防御した為無傷で済んだ。
この攻防戦は彼女に軍配が上がる。朽木さん、やりますな!
「…朽木さん。被験者としての役目を終えたら阿散井も僕も元に戻るんだから、そんな軽々しく一線は越えられないよ……ていうか越えたくもないし。」
そそそそうだよね!石田くん!石田くんはそうだよね!
「……現世の冬は日が落ちるのが早いな、もうこんなに暗い。恋次、話がある。近くの公園まで付き合え。井上はどうする?」
「あたし?ええと……。」
大事な話なら自分はいない方が良いと思い、帰る旨を告げようとしたら。
「そう遅い時間じゃないけど、暗いから家まで送るよ。」
そう石田くんが申し出てくれた。
「なら俺も……。」
恋次くんが石田くんに続こうとすると。
「お主には話があると言っておろう。」
朽木さんが引き止める。
結局。
4人で近くの公園へと寄り道する事となった。





朽木さんと恋次くんが場を離れたので、今はあたしと石田くん…2人きりだ。
公園のベンチに並んで座っていると、石田くんがポツリとあたしに話し掛けてきた。
「あの…井上さん。さっきの話だけど……。」
「話…?」
んー……あたし、意識が何かトロンとしてる?受け答える声も何処かフワフワな感じ。
「僕が…朽木さんの事を……その…好きとかっていう………。」
「ああ、大丈夫!誰にも内緒にするよ?ちゃんと分かって……。」
「そ、そうじゃなくて……ええと、違うんだ!」
違う?何が?
「井上さんの誤解なんだ!僕は別に、朽木さんの事は……そういう意味では好きじゃないよ。」
「隠さなくても……。」
「いやもう何一つ隠し立てしてないから。真実だから。」
あれぇ?
だっててっきり…はれ?違うの?本当に?
「石田くん…あんなに可愛いワンピ、朽木さんにプレゼントしてたから、これはもう、愛の成せる技に違いないと思ったのに………マジですか?」
「マジです……というか、井上さんの誤解の元ってそれ?」
「うん、それ。ええ?あんな素敵なワンピース、本当に朽木さんの為だけにあつらえたかのような出来栄えなのに?愛はないの?」
「いや…確かに朽木さんの為だけにあつらえたけど、愛は無いよ?」
「……無いのかぁ。そっか。あ、ごめんね?無駄に騒がせちゃったかな?」
「まあ、誤解が解ければそれでいいよ。」
何だ、違うのか。お似合いだと思ったんだけどな……石田くんと朽木さん。すごく残念。



あ…………細雪。



吐く息は白いけど、そんなに寒くは感じない。
そういえばファミレスを出る時、石田君がマフラーを貸してくれたんだっけ。
あったかいな……マフラーも、石田くんも。
あれれ…もしかして、あたし、目ぇ瞑ってる?視界が暗い。
だめだよう…あたし。雪山で眠ったら凍え死んじゃうんだよぉ……。
「…井上さん?だめだよこんな所で眠っちゃ!風邪ひいちゃうよ!」
ほら、石田くんもそう言ってるよぅ……ん?何かちょうど良い枕がそこに。
「井上さん!ダメだって!起きて!」
なあんだ、石田くんの肩だ。あったか~い。石田くんの心みたいに暖かい……そっかぁー。
石田くんてばホッカイロ的な存在なんだ。胸の内からポカポカする。
んん?恋次くんの霊圧?朽木さんとのお話が終わって戻って来たの?
朽木さんの霊圧は感じない。一緒じゃないの?帰っちゃったの?
何?珍しく恋次くんの霊圧が剥き出しになってる。
初めて…見る?ていうか感じる。これだけ人に霊圧を晒す恋次くんは。
虚を呼ばない程度には抑えてるけど、恋次くんて、こんななんだ。
優しくて、強くて、激しさも恐いものではなくて……この人の傍にいると安心する。
普段の乱暴な口ぶりからは想像もつかないような、慈しみすら感じ取れる………これ、本当に、本物の恋次くん?こんなに優しい人だったんだ。ん?人?死神?
「この寒空の下で、よくも眠れんな、井上織姫。真似できない神経だ。」
恋次くんがそう言って、石田くんとは反対側のあたしの隣に腰掛ける。
ウソウソ。言葉は辛辣だけど、結構あたしのこと心配してるっポイよ?
それより、朽木さんとのお話で、何かあった?それともさっきの書状が原因?
どうかした?何でそんなに霊圧が震えてるの?恋次くんは……今、誰を抱き締めたいの?
「井上さん、起きてくれないんだ。」
石田くんも、違うよね?そんな話がしたいんじゃないよね?
流石にくっついてる所為か、いつもより霊圧を感知しやすいよ。石田くん、今日はずっと沈んでた。
「優しく言ってるからじゃねーのか?役得じゃねーか。」
恋次くん、笑ってそう言うけど、笑ってない。
本当に話さなきゃいけない事を、避けてるの?石田くんは何を躊躇ってるの?
恋次くんは今どうしてこんなにも、切なくて、切なくて、切なくてたまらないの?
二人には、あたしの知らない何かがあるんだね……そしてそれは、あたしが知ってはいけない事なんだ。あたしが、今ここにいることは罪ですか?
「君、霊圧ウザいよ?何、黒崎みたいに出してんのさ。仕舞いなよ。」
「………俺にだって、たまにはそんな日もあんだよ。」
目を閉じているあたしにはよくわからないけど、多分……恋次くん、いま石田くんを見てる。
せめぎ合うような気配が、あたしの肌をチリチリと刺激する。
「石田はまだ、死神が嫌いか?」
「阿散井や朽木さんは嫌いじゃないよ。」
「……そうか。」
あ………。
二人とも、何時の間にかこんなに、こんなに…お互いがお互いの事、大事に思ってたんだね?
大事にし過ぎて、優しくし過ぎて、護りたい思いは同じなのに、擦れ違ってる?
霊圧を感じなくても伝わってくるよ?愛しさと切なさと。
何をも犠牲にしても失いたくないほどの、ただ一人に向かう激しさを。
「もう、いいだろ?」
…え?何がいいの?恋次くん………。
「…………井上さんが、起きるよ。」
あたし?ごめん…石田くん。起きてる。
「そんな温い言い訳じゃ、止めらんねーぞ。もっと強く拒絶しろ。でなきゃ、YESと取るからな。」
「横暴。」
あたしに触れてはいないけれど、恋次くんの体温を体の直ぐ近くに感じる。何?
石田くんは身じろぎもせず、雪のように静かだ。
ああ、理解した。恋次くんは、あたしの体を乗り越えて、石田くんに触れようとしてるんだ。
何だろう…二人の事が手に取るように分かる。あたしに伝えようとしてるみたいに。
恋次くんは、石田くんに口づけようとしている。石田くんはそれを拒まない。
今、二人は答えを出した。あたしはたまたま、空気の如く、その場に立ち会った。
そういうこと?
「おめえはもう考えなくていい。俺が何とかする。ただ俺から離れるな。」
優しくて、強くて、激しくも安らぎを与えてくれる、恋次くん。
石田君はただ、雪のように白く、雪のように静かに、恋次くんを……受け入れた。



二人はくちづけた。約束を交すように。涙を流すように。



あたしに、何か出来ること、ないかなぁ。何だか悲しくて、ほっとけないよ。



護れるのは、お互いだけじゃないから。あたしも、黒崎くんも、茶渡くんも、朽木さんも。



二人を護りたいよ。助け合いたいよ。あたしたちが精一杯伸ばした手を、どうか強く握って欲しい。



ていうか、勝手に助けるけどね。知っちゃったから。迷惑がられても無理。助けるよ、二人とも。
みんなに助けられたあたしや朽木さんには、そうする使命がある!義務じゃなくて、使命!
誰一人欠けたくない。みんな一緒だよ?あたしは、幸せになりたい。みんな一緒に。



口づけから、想いが滲む。
恋次くんがどれだけ焦がれて、焦がれて、石田くんを手に入れたか。
そして石田くんは……ええと。石田くんはもう一杯一杯な気配が漂っ……あれ?
それについて、何かしらの大前提を忘却の彼方にやっちゃった気がするのだけど……はて。
いやいやいやそれよりも!石、石田くん大丈夫??
長いよ!恋次くん!長すぎるって!石田くんのこの感じだと、絶対ファーストキスだよ?
ちょっとは手加減しようよ!激しいタイプなのは分かったから!
石田くんは何でいつものように反撃しないの?あたし?あたしに遠慮してんの?
うわあ~~~っ!あたしが止めるべき?タイミングが計れないよう……。
でもでもでも、石田くう~~ん!



「世界で一番歳の差カップル!!!」



あたしはよく考えないまま何かを口走り、ガバッと顔を上げた。
同時に恋次くんの顎にヒットしたらしく、恋次くんはベンチから転げ落ち、顎を押さえたまま無言で震えている。ご、ごめんね恋次くん。あたし、石頭で。
舌噛まなかった?大丈夫?ん?義骸って死ぬの?
「……起、起きた?井上さん。」
取り繕うよな笑顔を浮かべて石田くんが言う。
「おはよう…石田くん。」
あたしも何と返していいか分からず、取り敢えずそう言ってみた。
うわっ!生チューだ、生チュー!うっかりスルーしそうになったけど!今頃ドキドキしてるよ自分!
「送るよ、井上さん。」
「あ、ありがと。」
あれ?何か視界が…ぼやける?まだ眠いのかな、あたし。
違う。頬をつたう涙が原因みたい。泣いてるの?何で?
あたしは悲しくないよ?
でも…涙は次から次へと溢れ出て、止まるところを知らない。ポロポロと、ポロポロと。
これが何の涙なのか、あたしには分からない。
そんなに申し訳無さそうにしないで、石田くん。違うから。悲しくなんかないから。
優しい霊圧があたしを包む。恋次くん?あたし平気だよ?
「すまねえ………。」
ああ、うん。やっぱりそうなんだ。あたしに知らせたかったんだね?二人のこと。
恋次くんが謝るのは、そういうことなんだよね?
あたし、嬉しいよ。何にも言わずにいなくなるよりも、一言、それが無理なら違った形で。
苦しいって、伝えて欲しい。だから、伝えてくれて、ありがとう。
恋次くんは、本当に、石田くんが好きなんだね。



きっと、護れるよ。石田くんのことも、何もかも。



あたしたちは仲間の為なら、不可能を可能に出来る。きっと上手くいく。
あたしたちは、何者にも屈しない。
だから、あたしたちの手を、見失わないでね………恋次くん。石田くん。



気のせいかな?
雪の歌う音が、二人の代弁のように聴こえた。


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                                                      END


■ 終わりました!今回、ギャグ、ほのぼの、シリアスを網羅しようと画策しました!どうでしょう
きつね様からのリクエストは、『織姫に振り回される恋雨』でした!誤字脱字はご愛嬌!

■ 突然お話を2つにわけました。何故かというと携帯だとお話が長いためか、途中で切れてしまうのです。これからは気をつけて書きますです(汗)

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