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君無き世界(倉庫)

イチウリ妄想暴走日記へのご来訪、ありがとうございます^^

一護王族UPです

うっかりしてたけど、2013年以降書いてなかったですね^^;
今年に間に合って良かったですwww


─────


今から百年とちょっと前。
朝目覚めたら、理由もなく胸が痛み涙が出た。
何でかは分からない。ただ悲しかった。でも思い当たる節も無い。

それから気が付けば何かを探している自分に気づいた。
ずっとずっと、探し続けた。
探し物が何なのかも分からないのに、求めてやまない。
ただ悲しくて、苦しくて、切なくて。
百年もの間、みんなに囲まれ穏やかで優しい日々を過ごしながら。

俺はずっと孤独だった。

現世も、尸魂界も、虚圏も全部、百年かけて探した。

でも見つからなかった。

あいつがいない。どこにもいない。
あいつって誰だ?
手を伸ばしても届かない。掴めない。
俺は何を掴もうとしてるんだ?
どうしたらいいのか分からなかった。
もう限界だった。

そんな時、王族特務からの誘いが来た。
後、探していないのはそこだけだ。
たったそれだけの希望を掌に握りしめ、離れ難い仲間との決別を選び、俺はそれを受諾した。

それからはひたすら、王の近くを目指した。
そんなのは全く俺らしくない。
だが何故か、そこに何かがあるような気がして、我武者羅に頑張った。

そしたら、後宮の警護を命じられた。
走って、走って、転びそうになるくらい先へと急いでた俺の前に。


あいつが────現れた。

 


踏み散らされた花を目印に、一護は向かうべき方向を確認しながら歩いた。
いつもは王宮の外で神殿を見上げるのが仕事だったが、今日に限って王への正式な近衛となる儀式を行う為、神殿の奥深く、霊廟にて一人で座して待っていた。
歴代の王族が眠るこの場所では霊圧を感じ取る事が出来ないらしく、自分の目と耳を頼りに敷き詰められた花の上を歩く。
正体不明の敵襲を受けたのは、霊廟に入って来た近習たちの言で知った。
「よいか!賊をこの霊廟の中に入れるでないぞ!この聖なる墓を卑しき暗愚に踏み荒らさせてはならんのだ!!」
近習たちはそう言いつけて奥へと逃げ去り、残された一護は腕を組んで鼻白んだ。
自分たちが安全へと退避する為に、自分たちで慰霊の花を蹴散らしている。
だが、ということは、その先には秘密の抜け穴のようなものがあるのかも知れない。
霊廟から出て神殿で賊と対峙するよりも、とにかく外へ出たかった。
そして一刻も早く、後宮へと急ぎたい……。

『一護────』

あいつの声が、胸の奥から離れない。
あいつとか言ったらダメなのは分かってる。俺の手の届かない花だ。綺麗な……花だ。
真っ直ぐに俺の目を捕えるもの言いたげな表情が、いつも気になって仕方なかった。
でもそんな事訊けやしない。

『俺に何か、言ってしまいたいことでもあるのか?』

訊ける訳がない。

一護の切なげに寄せた眉に、憂いと期待が交じり合う。
目を閉じても忘れること叶わぬように、瞼の裏に美しい人が蘇る。
初めてその姿を拝謁した時、一瞬にして100年の孤独が喜びに満たされた。

『こいつが、俺の求めていたものだ』

それが分かった。
この方は王の側室、そんな筈はない、到底有り得ない話だ。だがそんな事実はどうでもいい。

俺が、雨竜様をあそこから連れ出す。

その為に、一護は後宮を離れた。
雨竜を側室の身分から外す。何か方法がある筈だ。無ければ………無いで、攫って行く。
そこまで思いつめても、そうしてしまっても、後悔はしない。
その雨竜が、今どうしているのか気がかりで、居ても立ってもいられない。
後宮はいつも、水を打ったような静けさだった。
あの宮女たちは側室を護るというよりも、使命を帯びて動いている感じがした。
誰も、雨竜を見ていなかった。
撫子と楓以外は。
着飾った罪人のような暮らしを強いられる。そんな雨竜の姿を見ていたくない。
もう、誰かのものになったあいつを見ていられない。

「一緒に、帰るぞ。俺たちの帰りたい所へ…」

思わず口から出た言葉。それが全ての謎を払拭したように、自分の心に響く。
乱れた花を踏みしめる。
逸る心を歩みに乗せ、一護は厳かな花の道を進んだ。

 


***ちゃんと続くよ^▽^;

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