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generation gap 2
つまんねえ仕事やらされてんな、俺。つくづく思う。暇だ。
石田が通う学び舎の敷地内の隅っこで、俺は自分の霊圧を抑えながら勉学に勤しむ石田他数名の霊圧を探る。マジ嫌な任務だ。
まあ・・・・・石田の飯は美味いし、居心地は悪くねえ。
後は現世にいる奴らにどう説明すっかな・・・・・・一護は鈍いから問題無いとして、口数の少ない茶渡は勘はいいが何か起こらねー限り、疑問を言葉にしないだろう。
井上織姫は・・・・・・突飛な性格だしよく判んねー。しかし、あいつらの絆の強さをなめちゃダメだ。
何か上手い言い訳はねーもんかな?
俺がずっと現世にいて、浦原さんトコじゃなく石田ん家にやっかいになってて、尚且つ24時間石田に張り付いててもおかしかねえ理由が・・・・・・・・・・・・・どう言ったって説得力ねーな。
俺は夾竹桃にもたれかかり、現世の空を仰いで大きく息を吐く。
大体石田も言う事がイチイチ細けーよ。
やれ義骸は近所の目があるから死神の出で立ちでいろだの、君の60年代ファッションは最悪のセンスだの(第一あれは義骸のオプションだ。俺の趣味じゃねえ)。
『君に監視される事について、僕が快く思っていないのだけは覚えておいて欲しい』
石田の言葉が胸に苦く広がる。
そらぁ・・・・・・判ってるっつーの。仕事なんだ。仕方ねーんだよ。
尸魂界の恩人の一人である石田を・・・・・・現世でルキアを助けようとしたあいつに俺が深手を負わせ、それでも尸魂界まで一護達と一緒に旅禍となって救出に来てくれた。
そんなあいつに対し、これは余りに無礼な仕打ちだ。判ってんだよ。
けど俺がこの任務を受けないと、あいつの監視に付くのはあいつの事を何も知らない、容赦の無い隠密機動になるだろう。もしそんなのと揉めたら、石田の立場を悪くする。
俺なら状況を見てあいつを庇ってやれる・・・・・・そう思ったんだ。
それでも俺がどう考えていようと、あいつを不快にさせるのに変わりはないが。
思いに耽り、ぼんやり冬の空を眺めていると、いきなり一護の霊圧が膨れ上がった。
「な、何だ?」
戦闘態勢に近い霊圧だ。殺気はないが、殴る気満々といったところか。
おお?ちょっと待て!真っ直ぐこっちに向かってねえか!?
虚か?しかしそんな気配はない。伝令神機もうんともすんとも鳴ってねーが・・・・・・・。
「恋次!」
一護が迷いなく名を呼ぶ。
やっぱ俺か。どう誤魔化すか、まだ何も思いついてねえのにな。
「何でお前がこんな所にいんだよ・・・・しかも一週間も前から!俺たちに挨拶もねーで、何こそこそ隠れてんだ!」
気付いてやがったのか?こいつに気付かれてるようじゃ、俺も形無しだ。
「・・・て、そう井上が言ってた!本当か?!」
お前が気付いたんじゃないのかよ?何だ、情けねーな。
「まあ落ち着け一護。つか、今授業中じゃねーのか?」
「そんな場合かよ。お前・・・・・・俺らの内の誰かを、見張ってんのか・・・・?」
「・・・・・・・・・・・それも井上が言ったのか?」
「ああ」
参ったな。どうやら井上織姫を過小評価し過ぎてたみてーだ。
結構やるじゃねえか。霊圧探知能力だけなら副官クラスだぞ。
「黒崎くん!」
一護に続いて二つの霊圧が後を追って来てたのは気付いていた。
井上と茶渡だ。今追いついたみたいだな。
しっかし揃いも揃って授業はどーした?誰だか知らねえが、お前らの担当教師に同情すっぞ。
「恋次・・・・・一週間も前からこっちに滞在してて、しかも毎日学校にも来てたんだろ?それで何で黙りなんだ。何か・・・・・・あったのか?答えろよ・・・・・・・・・」
見つかる予定じゃなかったからな・・・・石田と何の口裏も合わせてねえ。
どうしたもんか・・・・・・・・。
「それはとてもプライベートな事だ。黒崎には関係ない」
突然かけられた声に、俺を含めここにいる全員が驚愕した。
石田の霊圧は完全に抑えられ、ここまで接近されるまで誰一人その存在に気付かなかった。
「い、石田?」
疑問符を返した一護に、石田は更に続けた。
「阿散井は今、深刻な問題を抱えている。それは僕にも関係する事だがあくまで二人の事情であって、出来れば他人には知られたくない。それでも、どうしても知りたいと言うなら黒崎。他言しないと誓えるか?」
何・・・・・・言ってんだ?
石田の奴、まさか監視の件を話すのか?不味くないか?
一護に喋るなっつったのお前じゃねーか。
「何だよ・・・何か悩んでんのか?俺で良ければ力貸すぜ・・・・」
「他言しないか?」
「お・・・おう。ぜってー誰にも漏らさねー・・・・・・・」
「そうだよ!あたしにも何か出来ないかなぁ?誰にも言わないよ!ね!茶渡くん」
「いや・・・・・俺は・・・・・・・・・・・」
静観していた井上が会話に乱入し、それに茶渡が巻き込まれる形になる。
「こうなったら致し方ない、心して聞いてくれ。実は一週間ほど前、阿散井はある任務を携えて僕の所へ来た」
何だ、結局バラすんじゃねーか。
どーなっても知らねーぞ俺は・・・・・・・・・・。
「阿散井恋次は惚れ薬の被験者にさせられ、今現在、僕に懸想している状態にある」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・懸想。
一瞬、放たれた言葉のインパクトの強烈さに、俺は真っ白になった。
だが直ぐ我に返り、纏まらない思考のまま反論を試みようとした…が!
言葉を発する前に、石田の手刀が俺の喉に炸裂した・・・・・つか、おま・・・・・ちょっ、喉仏を正確に狙ったろ!
急所だぞ!死ぬぞ!
「涅が無作為に選び、たまたま阿散井がその気の毒な実験体になった訳だが・・・僕もその無作為に偶然選ばれた犠牲者だ」
石田を除く現世組は、絶句したまま硬直している。当り前だ。
「す、すると、今二人は熱々のカップルって事?」
あ?井上織姫は例外だった。ものすげキラっキラした目で俺と石田を見てる。勘弁してくれ。
「薬を飲んだのは阿散井だけだよ。僕は心底迷惑してる。僕から100Mと離れてられないくらい症状は深刻なんだ。でもこんな状態にあるのを知られたくなくて、言い出せなかったんだ・・・・・・理解を得たかな?黒崎」
「おお!?おう!!り、理解したとも!!」
声裏返ってんぞ一護。
石田お前、それ、意趣返しなのか?そうなのか?
声、声出ねえ。ここは俺が石田に惚れてる話で幕を閉じるのか?他に設定なかったのかよ!
いや、色々あった中でこれを選んだのかもな・・・・・・石田、覚えとけよ。
「うう~ん・・・・でも好きな人を見る目じゃないっぽい?恋次くん、瞳からレーザービームが出そうなくらい睨んでない?石田くんの事」
「井上さん、阿散井は照れてるだけだよ。二人きりになると凄いんだから。今、やむを得なく一緒に住んでるんだけど、何度迫られて滅却しそうになった事か・・・・・・・・」
てめ・・・・てめ、殺す!ぶっ殺す!俺がその気になりゃ、お前に弧雀を出さす暇なく押し倒せるんだよ!っざけんな!
つーか、誰が押し倒すかこら!気色悪い想像しちまったじゃねーか!!
「そういう事だから、阿散井が僕について回ってても、憐憫の眼差しで見てやってくれ」
「うん、分かったよ。あたし、応援するね」
「・・・・・・何つーか、頑張れよ」
「ム」
応援すんな!何を頑張んだよ!お前らその了解した顔ムカツク!!
どうして惚れ薬なんて怪しげな話に納得してんだ!ありえねーだろ!何で涅隊長の名前ひとつでこんな荒唐無稽な話がリアルに聞こえんだよこん畜生!!
しかし後日。その設定はそのまま続行された。
この話を覆すほどの言い訳を、俺が思いつく事が出来なかったからだが・・・・・・・・
その後俺が石田を意識するようになったきっかけは、明らかにこれが元だ。
その時になって、石田は大いに後悔したが後の祭りだ。ざまーみやがれ。
・・・終わった・・・